吉野作造(1878-1933)といえば「大正デモクラシー」、というくらい、壮年期には本業の大学教授の仕事のほか、いわゆる「民本主義」に関する数多くの執筆、講演をこなした。
40歳(1918年)のときの年間講演回数が38件41回あり、総収入13,989円5銭。帝大教授としての収入3,768円50銭を大きく上回ったという。(紀伊國屋書店2009年、28分ごろ)
生涯に6人の娘を育てた生活費、「明治文化研究会」をはじめとする交際費のほか、中国朝鮮からの苦学生への援助もしていたが、それでも有り余る金を古書収集につぎこんだ。
昭和ヒトケタの円本が全盛のころ、古本展で百円使ったことがあるという。文学書が1点数十銭、雑誌のバックナンバーが1冊数銭という時代の話である。
明治時代の雑誌や新聞を集めては、当時の広告から未収資料をチェック。
買っては片っ端から目を通し、より分けて蔵書票を貼って保存。
つまらないと思うものは処分した。
そうして保存した、和洋あわせて9千冊近い旧蔵書は、昭和9(1934)年東京帝国大学法学部に買い上げられた。
明治10年代から20年代にかけて出版された外国の歴史、文化に関する翻訳書、自由民権運動関係や初期の社会主義文献に見るべきものが多いという。
参考
吉野文庫-東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター
(2023年9月8日閲覧))
http://www.meiji.j.u-tokyo.ac.jp/collection.html
柳田泉「明治文学研究夜話」33『明治文学全集月報』33(1967年)
(『明治文学研究』第6集(日本評論社1972年)に収録)
岡義武、三谷太一郎「啓蒙思想家の学問的生涯」『日本の名著』48付録(中央公論社1972年)
DVD「学問と情熱 25」(紀伊國屋書店2009年製作)

出典
田中惣五郎『吉野作造』(未来社1958年)
国立国会図書館「近代日本人の肖像」 (https://www.ndl.go.jp/portrait/)
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